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「1人じゃない」スパイダーマン:スパイダーバース視聴後感想

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スパイダーバースを見てきましたのでその感想を。スパイダーマン見たことない俺でもめっちゃ楽しかった…!

新時代の到来、映像の大洪水

特筆すべきはその映像表現。本作はいわゆるCG映画なんだが、アメコミのイラストがそのまま動いているような錯覚に陥る。いや錯覚じゃない。本当にアメコミのまま動いている。

演出一つとってもそうで、漫画のようなコマ割演出を用いて状況説明をしたりしている。ゲーマーには「グラビティデイズ」の会話パートを想像してもらえればわかりやすいかと思う。

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また、主人公の心の声が漫画の吹き出しと共にコミカルに描かれたりしているのも特徴。突然謎の力に目覚めて混乱している様が頭に染み込んできてよかったし、面白かった。

「アイデンティティ」

マイルスの家庭はいいとこの家で、学校も進学校に通ってる。一見すると勝ち組人生を送ってるように見えるんだけど、マイルスはそれをよく思ってない。なりたい自分と現実とのギャップを感じてる、まさに「思春期」の少年。

だが、大好きな叔父さんの死をきっかけに父親との関係が軟化。感じたままに己を表現する、アイデンティティを貫くことで本当の自分になれる。これは本作の1つのテーマにもなっている。それは従来とは一線を画したスパイダースーツの都会的デザインにも反映されているし、凛として時雨の「アイデンティティ」溢れる主題歌もそれを強調している。このシンクロ感が気持ちいい。

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個性豊かなスパイダーマン達

異次元から現れた個性豊かなスパイダーマン達も良かった。メタボっ腹で残念な別次元のピーター、バレエのような動きで敵を翻弄する女性スパイダーのグウェン、1930年代の刑事をモデルとした渋いノワール、カートゥーンのような雰囲気を持つハム、そして、まさかのロボットスパイダーである「SP//dr」とそれを駆る少女ペニー。

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コンセプトだけで凄いのに、キャラクターの個性毎に映像表現を変えていることに狂気すら感じる。ノワールは室内にいてもマントがはためいているし、ハムはカートゥーンアニメをそのまま持ってきたようなギャグ演出が光る。

その中でも特に注目したいのがペニー・パーカー。もう日本のアニメそのもの。この映画はCG映画だと冒頭で話したが、ペニーはまったくCG感がない。もちろん、本作以外にもCGを2Dイラストのように見せる手法を取っている作品はある。

最近だと、「ULTRAMAN」なんかがそう。そういった作品ってまだ動きにCG臭さ…「嘘」があるように感じていた。でも、ペニーに関しては手書きといわれても納得してしまうクオリティ。これには本当に驚きました。

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で、そんな表現方法の違うスパイディ達が同じ画面内で所狭しと動くわけだからもう情報量の雨あられ。眼福なんてもんじゃあない。こればっかりは劇場で見てもらわないと伝わらない魅力があります。

「ヒーロー」の苦悩

ハムが「全てを守れるわけじゃないのが、この仕事の辛いところだ」と言っていたように、他のユニバースからきたスパイダー達も、それぞれが受け入れがたい現実に直面している。でも、立ち上がって前に進んだ。それがヒーローだから。

巻き込まれたからじゃない、使命感でもない。「もう失いたくない」自分から望んだことで力を制御できるようになる展開は、ベタでありながらもアツかった。

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「運命を受け入れて」それでも前に進むスパイダー達と、「現実を受け入れず」失ったものを取り戻そうとするキングピンとの対比も良かった。

夢を見た少年、夢を取り戻した青年

最終決戦でマイルスが一人で決着をつけるのが良かった。ここでピーターパーカーが残っていたら「マイルスの物語」として薄くなっていたし、結局ピーターパーカーじゃん、となっていた。

だが、本作のもう一人の主人公は間違いなく別次元のピーターパーカー。妻との離別から怠惰な生活を送っていた彼が、徐々にヒーローとして復活する。力を制御しきれないマイルスを見て「俺が残って、みんなを元の世界へ帰す」そう語る彼の背中は間違いなくヒーローだった。

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誰だって、スパイダーマン

スパイダー人間って何人いるの?って疑問に対して「コミコンで聞け」って返すマイルスとか、ショップの店員してるスタンリーとかメタい要素もあります。ただ、このスタンリーのセリフが本作を象徴している。「必ず似合うよ。きっといつかね」マスクを被れば、誰だってヒーローになれる。1人1人がスパイダーマンだから。

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