遅ればせながら劇場版Fateを見てきましたのでその感想を。
2時間という長尺にもかかわらず、それを全く感じさせない。最初から最後まで見どころしかないのに見ていて疲れないバランス感覚が良かったです。とにかく熱量の高い作品で、見ている間に様々な感情を揺さぶられました。
衛宮士郎という英雄
「私、処女じゃないんですよ。」大好きな先輩。自分のすべてとも言える、大切な先輩。そんな士郎に対して、この言葉を投げかける辛さ。劇場で見ていて胸が締め付けられました。容赦なく降り続ける雨が、まるで桜の心情を表しているかのようです。その後も自分を嫌いになるような言葉を投げかける桜。
そんなことはお構いなしに、ゆっくりと、しかし着実に歩を進める士郎。そして桜を抱きしめ言います。「他の誰が許さなくても、桜ですら自分を許せないというなら、俺だけは桜を許す」そして、大切な家のカギを握らせます。
「みんなを救う正義の味方」を目指した少年が、「ただ一人の少女を救うために戦う」ことを決意します。ある意味で人間味のなかった士郎が、初めて人間になれた。そんな印象を受けました。
そして、桜と共に帰った晩。魔力が足りないとのことで士郎の血を分けることに。この描写が…めちゃくちゃく艶めかしい。いや、おかしいでしょ。舌使いがプロのそれだし、音がいやらしすぎるし、唾液が指に絡みつく。桜の表情も完全に発情しちゃってます。これには私も半勃起。劇場にいた男性はみんなそうだと思うよ、うん。
あんなものを劇場で流した須藤監督には頭が下がる。本当にありがとう。
…でももっとヤバいのが待ち構えていたよね。そう、士郎と桜の初体験。桜のほうから誘ってくるの、控えめに言ってエロスの塊。布団を敷いた夜の和室、下着姿で居乳美女に誘われる…男の夢が詰まったシチュエーションです。
この時の桜の下着もいい。変に飾らず、オーソドックスかつ地味な白で揃えています。これがそそる。桜ならそうだろ。純白だよ。
肝心の描写ですが…よくこれを劇場で流したな⁉ほんとに対象年齢12歳か⁉といいたくなるほど濃密でした。下からのアングルで見上げる桜の身体は汗だくで、あまりにも刺激が強い。胸の書き込みもどうかしてるし、表情だって変幻自在。下半身に毒だよ。
っと、セクシー描写について語りましたが、このシーンって物語においてすごく重要ですよね。桜にとっては初めての愛のある行為で、ようやく大好きな人と一つになれたし、自分のものにできた。そんな桜とは対照的に、士郎は桜の影に違和感を感じます。その恐怖・不安を忘れるためか、強く桜を抱き行為におよぶ。この感情とリンクした行動が生々しい。
人智を超えたサーヴァント戦
バーサーカー対セイバーオルタ戦は、一瞬たりとも目を離せない豪華な絵となっていました。影の中から現れるオルタが不気味です。相対するはイリヤのバーサーカー。パワー比べでセイバーに引けをとることはない…と思ったら、異常な魔力放出!宝具であるエクスカリバーを惜しげもなく連発します。そして陰に拘束され身動きが取れなくなったバーサーカー。絶体絶命のピンチに、イリヤの想いを受け立ち上がります。感情の昂ぶりに呼応して煌々と赤く光る肉体、躍動する筋肉。鬼気迫る表情でオルタに肉薄します。
一度触れればアウトのはずの泥に浸かりながらも戦い続けるバーサーカーの底力を思い知りました。しかし真に恐ろしいのはオルタ。エクスカリバーを連発するのはもちろんヤバいですが、放出した状態で横に薙ぎ払ったりぶん回したりしていてまさに「対軍宝具」の名にふさわしい蹂躙っぷりでした。
そんなエクスカリバーを受けながら、ナインライブズにより何度も蘇るバーサーカーは恐ろしくも力強い。ほんと、とんでもないサーヴァントだと思いますよ、ヘラクレスは。そういえば、このナインライブズの蘇りをそのまま再現したゲームがあるようですよ?タイガーコロシアムって言うんですけどね…。ええ、もちろんバランスは崩壊してます。バーサーカーは無敵だからしゃあない。
サーヴァントバトルの肉弾戦で何が好きって、「もしも人間がリミッターを外したら」をやってくれることです。見た目は人間だけど、これが英霊だ!と魅せつけるような動き。その動きが、あくまでも人間の延長線上にあるのが好きなんです。第一章で話題となったランサーの走り方も然り。
桜と影
突然始まったメルヘン桜劇場。可愛いドレスを着て、なにやら人形たちと戯れている様子。クマのぬいぐるみを指で弾くと、なんと飴玉になりました。なんて素敵なんでしょう。自分を囲んでいたぬいぐるみ達をえいえいっとかわいらしく弾いていきます。飴玉の包みを開いてみると、綺麗な赤い飴玉が。とっても可愛くて美味しそう。早速口にほうばって…。というところで、映像は現実世界に。うつろな目で血だらけの桜。飴玉は人間の指でした。なんて、なんて凄惨な光景。ぬいぐるみ達は人間で、飴玉はバラバラになった人の暗喩だったのです。そこに現れる英雄王。せめてもの慈悲から桜を殺そうとしますが…。
バビロンを食らい、切断される肉体。それでもなお死なない桜を見て不審に思うギルガメッシュ。近づいて触れようとしたその時。自分の足が切断されていることに気づきます。そして、再生する桜の腕。この時の「異形感」が禍々しく不気味で、まるで映画「貞子」を彷彿とさせます。そして、影でギルガメッシュを吸収します。
ギルなりの優しさで桜を殺しに来たのに、逆に返り討ちされてしまうという。まあ相手が悪いよね。それにしても、片足失っても体勢を維持できる体幹の良さよ。
…改めて、この桜を許すということがいかに大変なことか強調されましたね。
大河の言葉、士郎の葛藤
作中、大河が桜に語り掛けるシーンがあります。映画的には、ずっとボルテージが高いと疲れるから「箸休め」的な意味合いもあったかと思います。しかし、そんなシーンでも見どころなのがこの映画の凄いところ。
先輩を傷つけてしまう、夢を壊してしまうという桜に、士郎の側にいてあげてほしいと語り掛けます。それは、大切な人が離れていく辛さを知っている大河だからこその言葉。
場面は変わり、臓硯と士郎の邂逅。影の入り口である桜を殺さない限り、冬木の人々が死んでいくことを明かされます。そんな悲しい事実を知った上での桜との会話は胸が痛みました。「この戦いが終わったら、桜を見に行こう」そんな会話をした日の夜。士郎は、包丁を手に桜の元へ。その目に感情は感じられません。桜の前に立ち、包丁を構える。
しかし、振り下ろせない。次第に手の力が抜け、嗚咽とともに溢れ出す涙。衛宮士郎という壊れた男が、初めて人間になった瞬間。この一連の描写を丁寧に描いてくれたことに感謝。
I beg you
主題歌である「I beg you」がHFにおける桜の心情を表しており素晴らしいです。
「ねえどうか側にいて、泥だらけの手を取って」
「おびえた子鳥はさよならなんて言えなくて、愛を請う仕草で黙り込んでつつましいつもりでいた」
「一つに溶けてしまいましょ、憎しみも愛情もむしゃむしゃと」
2章の冷たく不気味な雰囲気を表現した澤野氏の音楽と感傷的な歌詞、桜の心情を代弁するかのようなAimerさんの歌唱力。この3点が高い次元で混ざり合い、エンディングでの素晴らしい余韻を創り出しています。
総評
圧巻の戦闘シーン、不気味かつ熱量の高いシナリオ、それらを表現した主題歌。すべてにおいて文句なし。本当に最高の2時間でした。その他の感想としては
・正座してご飯を食べるライダーかわいいよね。ナイフとフォークの洋式セットアップだ!
・時折アーチャーが見せる「士郎っぽさ」に感情を動かされます。映像での所作はもちろん、諏訪部さんの士郎に寄せた演技が素晴らしいです。達者でな、遠坂。
・士郎の胸にダイブするイリヤが可愛い
・慎二に「こっちを見ろ!」と叫ばれ興味なさげに振り向く凛
などなど…。ほんとに見どころしかなくて、全部は語りつくせません。第1章同様、2回目を見ることになりそうです。ここまでの作品、なかなかお目にかかれませんからね。
早くも第3章が楽しみです。