4gamerさんでスパロボ30のインタビュー記事が公開されました。
https://www.4gamer.net/games/579/G057907/20210803079/
30周年ということで、OGやリメイク、参戦作品の選定方法についてなどスパロボに関する話題全般を取り扱った非常に内容の濃いものとなっていました。
その中でも特に重要だなと思うものを共有していきたいと思います(表現は元記事から変えている箇所があります)。
Q.スパロボで一番大変だったことは何か
A.シナリオと戦闘アニメのクオリティを保ちつつ、どう進化させるかということ。
戦闘アニメのクオリティは上がり続け、制作コストと時間に大きな影響がある。
シナリオは原作を理解した上でクロスオーバーさせる工程がシビア。
シナリオをどれくらい読んでいるかというアンケートを取ったら思いのほか読まれてなかった。
でもシナリオ軽めにしたらユーザーから怒られて元に戻した。
Q.思い入れのあるタイトルは?
A.α、Z、Vのような新シリーズの1作目やOGシリーズ。単発だとMX。
シナリオの8〜9割を自分で手直しすることになったのが大変だった。
Q.ユーザー人気の高いタイトルは?
A.アンケートを取るたびに変わるし世代によって結果が変わるが、OGを除けばα、W、V、A、Dあたり。特定の作品がズバ抜けて人気が高い・低いということはない。
Q.30年間でファンの世代が変わっている実感はあるか
A.ある。「スパロボ遊んでます!」⇨「小さい頃プレイしてました!」⇨「親がやってて自分も遊ぶようになった!」という風に変わってきている。
海外ではスパロボをきっかけにゲーム開発を志したという方から声をかけられることがあった。
Q.ユーザーの平均年齢、男女比はどれくらい?
A.30代前半がピーク。男女比は男性の割合が圧倒的で95%を占めている。
Q.もう少し女性が多いと思っていましたが?
A.女性を取り込むなら「15人の男性パイロットの誰と恋に落ちる!?」くらい根本的に変えないといけないんじゃないか。でもそれやると男性から「そうじゃねえよ!」となりそう。
Q.海外人気はどう?
A.一概には言えないが、台湾をはじめとするアジア圏の需要は無視できない状態。熱量も日本に負けないくらい高い。
海外ユーザーの比率はみなさんが想像しているより高いはず。Steam版スパロボ30は海外からの予約も好調。
Q.版権元への交渉は専門のセクションがやっている?
A.ネットでは「寺田が交渉に行っている」と言われているが今は違う。版権元がキャラクターの使用許可を出しているのはあくまでもバンダイナムコエンターテインメントという会社。
Q.新規作品を作るときは参戦作品の選定から始める?
A.そう。何を出すか決まらないと開発が始められない。例外はない。
Q.どの機体を出すかは開発が決める?
A.開発サイドで決めていく。「この機体は出さないとだよね」というものから選定していき、それ以外は予算や時間との戦い。例えば、Zガンダムが参戦するなら主役機のZガンダムは確定、ガンダムMk-Ⅱや百式などが入るかはケースバイケース。
以前は参戦作品を決めるために貸し会議室をとって合宿のようなことをしていた。
Q.参戦作品を決める際の視点は?
A.寺田Pや最上Pが出したい作品、スタッフから提案された作品をすり合わせる。参戦作品はストーリーだけでなく様々な側面から検討している。特にガンダムはバンダイナムコエンターテインメントの方が詳しいため、寺田Pは提案するだけ。提案したものが全て通るということはない。
寺田P一人で参戦作品を決められたのは最初機だけで、第二次αの頃からみんなで決めてた。
参戦作品を決める上で"バンダイナムコグループに商品化権があるかどうか"が一つの基準となっている。ただし例外はある。
例えば新世紀エヴァンゲリオンは"セガサターンでスパロボを出すなら" ということがきっかけの一つになってスパロボFの開発が決まった。
他にも申請をし続けてやっとOKが出た作品もある。
Q.スパロボ30の参戦作品はどうやって決まった?
A.スパロボTからどの作品を継続させるかというところから検討。それプラス海外のデータを参照して作品を加えていった。
Q.この作品を出して欲しい!というファンの声は参考にしている?
A.ユーザーの声の大きさは一つの基準として見ている。
あとは立体物の売れ行きや展開時期から参戦が決まることもある。
スパロボ30のエルガイムは「昔からのファンが望んでいるから参戦させたい」という寺田Pの思いから始まり、立体物の売れ行きが参戦の裏付けになった。
Vガンダムも主役機だけでなく、ガンブラスターやシャッコーのようなモビルスーツまでプラモデル化したことが参戦の後押しの一つになった。
Vガンダムは開発サイドが持っているデータからも参戦要望が多いことがわかっていた。
そのためぜひ出したいということでスムーズに参戦が決まった。
Q.グリッドマン参戦の経緯は?
A.放送当初から注目していたし、緑川さんや稲田さんから「スパロボ出れますか?」と質問されていた。アニメ版はロボットみたいなメカも出たし、サイズも巨大ロボットと合うという事で最上さんに提案した。
Q.ジェイデッカーの参戦は?
A.スパロボV、X、Tで勇者シリーズのニーズが高いことがわかった。その上でジェイデッカーは韓国で人気があるということもわかっていたからそれを踏まえての参戦となった。
Q.30周年作品としてのコンセプトは?
A.選択の幅があるスパロボが一つのテーマ。タクティカル・エリア・セレクトもその一つ。
従来作品だと基本的に一本道だったが、タクティカル・エリア・セレクトはプレイするミッションをある程度自分で選べる。キーミッションだけを遊んで最短距離でクリアすることもできるし、ガッツリ遊びたければ他のミッションも含めてじっくり楽しむこともできる。
Q.選んだエリアによって仲間になる機体は変わる?
A.機体やパイロットの入手順が変わる。
Q.ストーリーはプレイヤーの選択で変わる?
A.ミッションの選択の仕方によるが、シリーズの中でも分岐は複雑。プレイヤーによって話の内容が違うケースが結構出てくると思う。
整合性を取るのも大変だし作業もかなり手間がかかっている。
シナリオライターから「こういう形でやらせてほしい」と提案され、それならということでやってもらった。
タクティカル・エリア・セレクトはVXTの問題点を解決できるものとして導入している側面もある。
一つはプレイ時間、もう一つは作品の参戦時期によって使える期間に差があったという問題。
「好きな作品が参戦しても使えるのが遅くて残念」という声をある程度解消できるようになっている。
Q.AUTOバトルを家庭用スパロボに導入したのもそうした選択の一つ?
A.そう。今はゲームをしながら動画を見る人も少なくないし、スマホアプリでもプレイをスキップできる機能がある。だからスパロボもAUTOバトルを実装すれば現代的な時間の使い方に対応できると思った。
Q.社内で反対意見は出なかった?
A.家庭用のスパロボにAUTOバトルを実装するのは反対意見もあった。
ただ最上Pに相談した時は即OKが出た。
賛否両論あると思うが、今回実装して反応を見てみる。
本当はスキップ機能も入れようと思っていた。
シナリオから戦闘まで丸々スキップして経験値と資金は最小限しか手に入らないというものだったが流石に反対された。
Q.ヒュッケバイン30が話題になっているが?
A.カトキさんと打ち合わせ時に「30周年だからヒュッケバイン30という名前にしたい」と答えた。
カトキさんが「30ならローマ数字のXXXをバイザーにできるんじゃないか?」とおっしゃってあのデザインになった。即決だった。
普段は開発側から機体の設定を考えてからデザインすることが多いが、ヒュッケバイン30はデザインありきでその後に設定を考えた。
Q.プレミアムサウンドエディションがDLC展開のみになったが?
A.パッケージで販売すると、通常盤を買ったユーザーが後からボーカル曲を楽しみたくなった場合にかいなおさなればいけなかった。その問題を解消するためにDLC販売という形にした。
海外を意識している側面もあり、これまではプレミアムサウンドエディションは日本のみの販売だったが今回は海外ユーザーも原曲を楽しめる。
SRXとサイバスターはパッケージ版の早期購入特典、もしくはダウンロード版の予約購入特典のみの登場となっている。早期加入の権利ではないので注意してほしい。
Q.「ロボアニメは本数が減った」「新規層が入ってこない」という人がいる。寺田Pはロボアニメの現状をどう分析している?
A.毎日ロボアニメを放映していた1980年代後半が比較対象ならそう思えるかもしれない。
ただ、世間で大きな話題になった作品もあるしおもちゃもいっぱい出てる。特に下火になったという印象はない。ロボアニメ衰退論はあまり気にしていないし、逆に「流行らないんじゃない?」と言われているなら競合が少ないという意味でもチャンスがあると思う。
Q.最近はデビルマンやゼンカイジャーのような作品が参戦しているが、これは新規層の獲得が狙い?
A.参戦作品の幅を広げ、従来のスパロボとは違う多様性を図ることも狙い。
いつものスパロボだと参戦させ辛い作品も、アプリのスパロボならシチュエーションを限定した単発のショートシナリオを作りやすい。
Q.今後の家庭用スパロボではアプリのような参戦はしない?
A.ユーザーから支持を得られる確信があれば考えが変わるかもしれないが、現在の体制ではスパロボDDのような参戦はないと思う。
Q.過去作のリメイクや移植予定はある?
A.常にやりたいとは考えている。
ただどう実現するかが問題で、αのような大ボリュームの作品を最新の演出でリメイクするのは大変。
かといってベタ移植だとプレイし辛いと思う。便利なシステムがないから。
仮に作り直すとすれば、システムは改良しても戦闘アニメは作り直す必要がないんじゃないかと思う。古き良きテイストをうまく活かして効率的に作れればいけるかも。
Q.OGシリーズは特に話のおさらいが難しい人がいるのでは?
A.過去作をプレイできるようにする必要はあると思っている。
例えば最初のOGからOGMDまでをダイジェストにして2本にまとめるとか。
Q.OGの今後の展開は?
A.OGMDの次のストーリーで完結予定。完結までの構想は大体できていて終わり方も決めている。
ただそれをそのまま実現するかはわからない。
Q.現行の版権スパロボとOG意外に作りたい作品は?
A.入門用のスパロボや子供をターゲットにしたスパロボ。
ロボアニメを知らない人がスパロボをプレイするのはハードルが高いから、新規層を取り込むには抜本的に変えなきゃダメだと思う。大人がプレイしても楽しく子供を喜ばせられるようなものを作りたい。
あと、年配者に向けたシルバービジネスがこれから成立していくと思う。例えば、復刻版のゲーム機が最近出ているが、あれは最新のグラフィックでのリメイクではなく当時のものが欲しい人が買っていたと思う。
スパロボも当時の直撃世代に向けてちょっとブラッシュアップする程度の方向性で作り直したものはアリだと思う。
具体的には、機体改造とパイロット乗り換えがあるくらいのベーシックなもの。文字の拡大機能をつけて、タイトルは「スーパーロボット大戦シルバー」や「真スーパーロボット大戦」など。
戦闘アニメを抑えた分、登場機体やキャラを増やしたり、機体の分離と変形をしっかり作ったりマイナー機体を出したい。
笑い話のように聞こえるがかなり真面目に考えている。
本当に作らせてもらえるなら予算を抑えにいきたい。
ボリューム多すぎて疲れた…
でも読み応えがあってたまらん内容でしたね。
私の所感は動画で作ろうかと思うので、気になる方はそちらも待っていただければ。